シンセ・サウンドの変化

先日から数年ぶりに安室奈美恵の曲を聴いています。
昨年出た「PAST FUTURE」というアルバム、特に「FIRST TIMER」はなかなか。
流行のヒップホップ・サウンドを取り入れていて。

最近、ヒップホップだけではないですが、色々な音楽でオールド・シンセ・サウンド(60、70年代を彷彿とさせるアナログ・シンセ・サウンド)や、あまり加工されていないシンプルな電子音をそのまま作曲に用いることが流行っていると思います。5〜10年くらい前からでしょうか。Radioheadの「Hail to the Thief」は2003年のアルバムですが、既に荒削りな”昔的”電子音が沢山入っています。電子音楽エレクトロニカでも90年代後半から00年代半ばまでサイン波やパルス波といったシンプルな電子音が流行りました。
15〜20年前はシンセサイザーの進化を作曲家も楽しんで、追いかけていた気がします。最新のサウンドを求めるという感覚でしょうか、KORG TRINITYというシンセサイザーはその最たるものでした。TRINITYは、使いやすさとその新しい音で多くのミュージシャンに愛用されたと思います。

KORG TRINITY 

でも、シンセサイザーの音があまりにも進化/複雑化すると、今度は反対にシンプルな音が好まれて使われるようになります。シンセサイザーから出すことのできる音自体が個性を強く持ってしまい、曲の中でその音が使われると「ー社製のーという機種」ということがすぐに分かってしまうことが多々起きるようになってからそれほど時間がかからず、シンプルな音が使われ始めた気がします。いつの時代でもどの分野でも言えることかもしれませんが、複雑化が進めばシンプルなものが、シンプルが進むと複雑なものが台頭してきます。

いま、シンプルなシンセ・サウンドがよく使われる。でも、そのサウンドの「使われ方」は昔のままでなく、変化しています。単なる古典回帰ではないことが、「次のサウンド」を作り出すきっかけになるのではないでしょうか。


Akonというセネガルのミュージシャンの「Beautiful」という曲は、シンプルなシンセ・サウンドと、トランス・テクノを思い出させる音が使われているカッコいい曲です。
Akon「Beautiful」http://www.youtube.com/watch?v=Djuy3UuDlyY

T-PAINというアメリカのミュージシャンの「Freeze」という曲も、シンセ・サウンドを含めた全サウンドはシンプルですが、聴かせ方、組み立て方がうまいです。
T-Pain featuring Chris Brown「Freeze」http://www.youtube.com/watch?v=s4k9qlQoXbg


シンセ・サウンド、電子音は今後どう使われるようになるのか、作曲をするものとしても、リスナーとしても楽しみです。