植島啓司「生きるチカラ」を読んでいて、ふと思い出したこと。

昨日、植島啓司さんの「生きるチカラ」を読み終えました。本当はその感想と、1日に見たブス会の感想も書こうと思っているのですが、どうしても「生きるチカラ」を読んでいる途中で思い出した話があり、非常に個人的なことですが今日はそれについて書きます。


2005年の7月、ふとニューヨークに行ってみようと思いたち、留学している友人を当てにして遊びに行ったことがあります。急に思いついたので、友人とニューヨークの劇場でアート・ディレクターをしている知り合いにこれから5日後に訪ねる旨をメールで伝え、飛行機のチケットだけを取り、そそくさと出発してしまいました。なんとも身勝手で、気まぐれな行動でしょうか。

一日目は到着が夜だったので友人が取ってくれた安いホテルに宿泊し(友人はシカゴにバスケ観戦に行っていた)、二日目の朝ホテルまでアート・ディレクターをしている知り合いが迎えに来てくれ、いざ観光開始。

早速PS1を見て、その後MoMAに到着すると、知り合いの様子がどうもおかしい。尋ねてみると、「劇場にお客さんが来ることを忘れていたから、急いで帰る」と言う。そして、謝られた後、急ぎ足で車に乗って行ってしまいました。そんなとき、携帯に友人からメールが入りました。何かと不運は重なるもの、メールには「シカゴの天候が悪く飛行機が全く飛ばないからいつ帰れるか分からない」と書いてあります。

これにはちょっと困った。初めてのニューヨークで、地図も持たず(知り合いを当てにしていたため)、地下鉄の乗り方も分からず、イエローキャブは怖い。何よりも海外旅行もろくにしていないので、勝手がよくわからない。そんな中でなんとか、<ここがどこか分からない場所(現在地)>から、<どこにあるのか分からない場所(ホテル)>まで帰らなくてはいけないわけです。さてどうしたものか。
とりあえず荷物を預けているホテルのフロントに電話をし、もう一泊することとおきっぱなしにした荷物をそのままにしておいて欲しい旨を伝え、ホテルの住所を聞き出してから、本屋を探し、マンハッタンの地図を立ち読みしました。店員に片言の英語で本屋が地図上のどこに位置するかを教えてもらうと、どうやらその本屋からイースト・ビレッジの端にあるホテルまで、大体13Km程あることがわかりました。

どうやって帰ろうかいろいろと考えた挙げ句、まあ何とかなる距離だろうと思い、ホテルまで歩くことに。特に予定もないですし、歩いていればそのうち必ずホテルに戻れるだろうと考えていました。
地図を片手に、7月の暑いニューヨークをただひたすら歩く。疲れるとスーパーや図書館に入り一休みし、また歩く。そのうち自然と街の雰囲気や店先での英語のやりとりにも慣れて来たので、折角だと思い歩きながら観光もしました。国連ビルまで行き、エンパイアステートの中に入り、バージン・メガストアに寄り、よくわからない場所をウロウロして。トイレは大きなホテルに入って借りました。

結局11時頃MoMAの前で一人になってから歩き続け、ホテルに到着したのが19時。約8時間!、はじめてのニューヨークをさまよい続けました。でも、自分の足で考えながら歩いたので、ニューヨークという街の構造や雰囲気を知ることができ、ニューヨークにいるという実感を持つことができました。8時間も歩くと結構どの場所がどういう雰囲気か、どういったお店が多いか分かるようになります。
MoMAの前で一人になり、友人とも連絡がつかないときはどうなるのだろうと思いましたが、帰って一人になることができ、旅を満喫することができたのです。

その後、地下鉄にもイエローキャブにも乗りましたが、なぜか歩くことが気に入ってしまい、滞在中はよく歩いて移動していました。おかげでたった一週間の滞在でしたが、すっかりニューヨーク通のような顔をして帰って来たのを覚えています。


あれからもう5年経ってしまいましたが、久しぶりに行きたいですね、ニューヨーク。